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あかるいかいひん
明るい海浜
宮本 百合子
「週刊朝日」1927(昭和2)年6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,608 字 · 16 页
一畳二円という事なのであった。
「へえ、夏場ですととてもそれでは何でございますが、只今のこってすから……」
彼等はそこを出てから、ぶらぶら歩いて紅葉屋へ紅茶をのみに行った。
「陽ちゃんも、いよいよここの御厄介になるようになっちゃったわね」
ふき子は、どこか亢奮した調子であった。
「――本当にね」
楽しいような、悲しいような心持が、先刻座敷を見ていた時から陽子の胸にあった。
「あの家案外よさそうでよかった。でも、御飯きっとひどいわ、家へいらっしゃいよ、ね」
大理石の卓子の上に肱をついて、献立を書いた茶色の紙を挾んである金具を独楽のように廻していた忠一が、
「何平気さ、うんと仕込んどきゃ、あと水一杯ですむよ」
廻すのを止め、一ヵ所を指さした。
「なあに」
覗いて見て、陽子は笑い出した。
「――貴君じゃあるまいし」
「なに? なに?」
ふき子が、従姉の胸の前へ頭を出して、忠一の手にある献立を見たがった。「サンドウィッチ」
すると、彼女は急に厳粛な眼つきをし、
「あら、ここの美味しいのよ」
と真顔でいった。彼等は、往来を見ながらそこの小さい店で紅茶とサンドウィッチを食べた。