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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
だらだらと観劇したり岡場所を漁ったりして通がっているだけだった。
田舎では多久の一族だが、東京では多久家などとはその苗字を知る人もない。おまけに本家とちがって、分家の財産は知れたもの、けっして一生遊んで暮せる身分ではないのであるが、オヤジの水彦がまた世間知らずのバカ者であった。彼は東京へ出ても、多久といえば天下の名門だと思っている。一人ぎめの名門を誰も信用しないから、益々こだわり、益々名門然、殿様然と見せたがる。だから、自分も働いてお金をもうけることをせず、木々彦がグウタラな道楽息子に育ち上るのを意に介せず、名家の子はノンビリとしたい放題、そんなものだと心得ている。そのくせ、内心は何よりお金が欲しい。一もうけしたいのだ。なぜなら、やがて文無しになるのを彼だけは充分に心得ていたからである。
金モウケといっても当てがあるわけではないから、何より残念なのは、木々彦が本家の後嗣になれなかったことだ。弟一家が本家にひきとられ、広大な別荘に起居しているのが残念でたまらない。何かにつけてその反感が言葉にでる。風守が業病にとりつかれたのは天罰だ。昔はそう言いふらしたものだが、今では、土彦の後妻に男子が生れて、もはや風守はキチガイでもないのに座敷牢へ閉じこめられている。