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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
一ツは生き不動の駒守が立っていた位置に。一ツは風守の座敷牢の位置に。当然各々の在るべきところに在ったのである。
これで済めば別に問題はなかったのだ。もう一ツのフシギがあった。あの時以来、木々彦の姿が失われてしまったのである。
三日すぎ、十日すぎても、姿を現さなかった。それを怪しんだのは一枝であった。彼女は英信を疑った。火事の起る直前の英信の挙動は奇怪をきわめているのだ。
別館で焼け死んだのは駒守、風守の二人であろう。しかし、ほかにも事件があった筈だ。それは英信が木々彦を殺したという事件であるにきまっている。英信は強い体力はないけれども、当夜の木々彦は精根つきはてて疲れきった廃人だった。子供の力でも締め殺すことができるような無力な木々彦であったのである。
何か重大なワケがあったのだ。木々彦を殺したのも、別館へ火をつけたのも、英信の仕業に相違ない。火事の直前のフシギな挙動がそれをハッキリ証明している。
一枝の話をきいて、水彦は木々彦殺しの容疑者として英信を訴えでた。それは火災後十日すぎて、駒守と風守の葬儀がその故郷で行われた後であった。
木々彦は果して殺されているか? 雲をつかむような得体の知れぬ事件であった。