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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
12 その十一 稲妻は見たり
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页
この近所に、ほかに井戸はあるのか」
むろん当時のことで井戸のないウチはない。母里家の台所は田舎風の土間になっておって、台所の中に内井戸がある。そのほかに馬小屋の横にも井戸がある。この二ツをしらべてみたが、同様に三枝子の死体はなかった。近所の家の井戸も見せてもらッたがどこにも三枝子の死体はない。
「すると、井戸へ石でも投げこんで死んだと見せて、自分のウチへ逃げて帰ったらしいぞ。三枝のウチはどこだね」
「三枝ちゃんのウチは没落して家も身寄りもないらしいのですが、たッた一人の兄さんがオソノちゃんの実家に居候だかお客様だかで居るようです。ねえ、オソノちゃん。たしか身寄りはそれだけだったねえ」
「そうか。それではオソノの案内でちょッと確かめてこい。居たら連れてこいよ」
と、若い巡査に言い含め、オソノの案内で下谷のオソノの実家へ向わせた。
★
三枝子の兄は頼重太郎と云って、二十五になる大学生だ。苦学のために、年をくっているが、秀才でもあるし、豪胆な熱血児であり、正義を愛し、弱者貧民のために身をなげうとうと心をきめた快漢であった。
オソノの実家は代々非人頭で、車善七の血統をひく今でも乞食の頭目。