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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

しかし彼は重太郎のすすめで五年前に乞食をやめ、薬種商をひらいている。実に重太郎が乞食の世界を巡歴して彼らを正業につかせようと努力しはじめたのはわずかに十七の時である。この少年の献身的な忠言に耳をかたむけてくれたのは、オソノの父、車長九郎あるのみだ。彼は薬屋をひらいて、輩下の希望者を行商人に仕立て、同時にとかく不衛生そのものの乞食どもにクスリを与え、まず健康、それから正業につかせようと努力した。けれども三日やると止められない乞食を先祖の代からやってる連中だから、誰も乞食をやめたがらない。生れつき乞食であるのに不服がないから、その身分に恥を感じなければ乞食をやめたがらぬのは当然かも知れん。

車長九郎は輩下の者が自分を見ならってくれないのにガッカリしたが、学業をなげうって乞食のために献身しようという重太郎を今度は彼がいさめて再び学業につかせた。重太郎は学業のかたわら乞食部落に寺小屋をひらいて、乞食の子供に教育をさずけ、子供が大きくなった時には乞食部落が自然消滅するような長期計画の実行にうつった。彼はヤソ教の教会で知り合った同じ信者の今村左伝夫妻にたのみ、三枝子とオソノを母里家へ女中奉公にだした。