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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

それからの時田は何をきかれても知らぬ存ぜぬ。嘘だと思うなら、女中に訊けの一点ばり。遠山は敵の弱点をついて、ついにねじ伏せたと見て敗残の敵の後姿を快く見送ったと思っていたのに、逆にそれを敵が利用して、メガネを買いに女中の一人を走らせる一方には女中を集めてアリバイの打合せ、女中たちに一切の訓令がぬからず行き届いてしまったに相違ない。二人はスゴスゴと退去せざるを得なかった。

母里邸へ戻ると待っていたオソノが走りでてきて、

「重大なことが分りましたわ。家令の今村さまのお宅は当家の裏、そしてあの裏庭の井戸のすぐ向うがそうなんですが、今村さまの御子息の小六さまと仰有る方が、井戸の水音をおききだったのです。小六さまは神学校の生徒で生マジメなヤソ教徒で、毎夜のように深夜二時ごろまで勉強なさるので有名な方です。裏庭の井戸の音におどろいて、立って下をのぞかれたそうです。あの方のお部屋は二階ですから、外はクラヤミで、のぞいても外が見えよう筈はありませんが、そのときイナズマが光ったのです。その瞬間に小六さまは井戸から遠ざかろうとする二人の人影をごらんになったそうです。二人とも、男ですッて。