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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

お三枝が己れのアヤマチと早合点してそッと家からぬけだした様子だが、裏庭の井戸へ身を投げたようだ。こう時田をおびやかして、わざと彼を井戸端へ案内して、屍体の有無をさぐるために石を落してみる。それが深夜の水の音よ。実地にこうまでしてみせるのは、時田をふるえあがらせてユスリをやるための際どいながらも思いきった手段だなア。由也は相当な悪党だぜ。こう悪度胸のある奴には、信心深い小娘などは却ってコロリと参るものだな。お三枝は無実じゃなく、正真正銘由也のイロであったかも知れないぜ」

海舟はこう語り終って、口辺にかすかな、その意味を理解しがたい謎のような微笑めくものを浮かべた。まるで石仏が一瞬ニッと笑ったようだ。虎之介はギョッとして、思わずハラワタの底の底まで凍りつくような恐怖にかられた。

★

正午に一同集まったが、新十郎は昨日の約束を忘れたように、雑談に時をすごしているのであった。そこへ古田老巡査が大急ぎでやってきて、一通の手紙を渡した。新十郎はそれを読み終ると生き生きと笑って、

「さて、出発の時がきましたよ。万事は考えていた通りでした」

一行が駒込の母里家へ到着すると、佐々警部補が出迎えて、お指図通り一同を一室に集めておきました、と云う。