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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
14 その十三 幻の塔
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页
ふりかぶって振りおろす剣には広さが必要だが、四尺二寸の杖は、四尺二寸の手の幅が上下にありさえすれば自由自在にあやつり得るもので、これもまた意外の一ツ。三畳の広さがあれば縦横に使える。婦人の護身用としてこれほど有利なものはなさそうである。
かかる巧妙な術が流行しなかったのはフシギだが、カラテも杖もあまりにも実用的で、必殺の術であるのが、悟道化した武道界に容れられなかったのかも知れない。
島田が主として伝えたものはこれであり、そのために特定の人格を選んだのである。
「島田の道場に普請があってツンボの大工を探しているが、貴公ひとつツンボの大工に化けてもらいたい」
五忘がベク助に話というのは、それであった。五忘は言葉をつづけて、
「実は、オレの妹のお紺というのが島田道場で女中にやとわれているが、このお紺は生れながらのツンボで、オシで正真正銘マチガイなしの出来損いだ。そのほかに金三とかいうツンボでオシの下男がいて、島田じゃア、ツンボでなきゃア下女下男に入れない家法だ。もっともお吉という女アンマが出入りしているが、これはメクラだとよ。今度の普請もツンボの大工に限るそうだが、幸いなことに、貴公が無口で横柄だから、近所の者もあいつツンボじゃないかなどと言う者がいるのは都合がよい」