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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
14 その十三 幻の塔
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页
ベク助が無口なのは熊に片アゴかみとられてから舌がもつれてフイゴの吹いているような風の音がまじるのも喋りたくない理由であった。
「そこで貴公に頼みというのは、縁の下から抜け道をつけてもらいたい。ここに手附けが三百両。見事仕上がったら、耳をそろえて七百両進上しようじゃないか」
ベク助は特に逃げ隠れているわけではないが、隣り近所のツキアイというものを全くやっていない。
そこで島田道場という奇怪な存在についても知識は乏しかったが、五忘の話の内容だけでも一方ならぬ曲者であることは明らかであろう。ツンボとメクラのほかには出入りを許さぬというから、人に知られては困る秘密があるに相違なかろう。
五忘のタクラミは分らないが、ニセツンボで普請を仕上げるまでには五忘の奴にも分らない秘密が握れるかも知れない。こいつは一仕事、しがいがあると考えた。
★
普請は福助の三次郎と平戸久作の娘葉子の新婚のための新居であった。
ベク助は島田の逞しさにも驚いたし、サチコの美しさにも目をうばわれたが、福助の三次郎にも一驚した。
小人の身体に大頭をのッけたこの畸形児の目玉の鋭さはどうだろう。