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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
16 その十五 赤罠
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页
病身の清作は東京以外を知らないし、チヨも女中たちも生粋の東京人だ。関西とちがって関東の者は概ね松茸についてファミリエルな鑑賞にはなれていない。ホンモノと毒茸とを並べて見比べれば疑問の判定はつくのだが、ヘップリコだのヅラダンゴという概念を持たないから、寮の人たちは怪しまなかった。
この怪死事件には、警察の手もうごいた。けれども、諸家へ松茸を配分したオタネ婆さんに怪しむべきところはなかったし、それを向島の寮へ届けた半助(十五歳)にも怪しげな節はない。
オタネ婆さんから半助の手に渡され、半助がそれを持って出発するまでと、向島に至る道中、及び向島の寮の者に渡されてのち料理されるまでの間には、誰の目からも距てられた時間がたしかにあった。
半助は向島へ至るまでに他の五軒に松茸を届けている。もっとも、向島の分だけは進物用とちがってミズヒキなどがかけられていないから、他家の分ととりちがえる筈はなかった。それらの家はいずれも山キとジッコンのところであるから、まアお茶菓子でもおあがりとカマチに腰かけたり、女中部屋へ引きあげられたり、茶菓をいただき、お返しの半紙など受けとって、順ぐりに五軒をすまして向島に辿りついたものだ。