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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
16 その十五 赤罠
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页
主人の喜兵衛がその妻を失ってのち妻帯しないから、彼も同じようにしなければ義父に義理が立たないような遠慮も必要だったのである。
重二郎の下に、一助(二十七)、二助(二十五)、三助(二十二)と順に符牒でよぶ定めになっている三名の小番頭がいる。その下に平吉、半助という小僧がいるが、いずれはこれも何助という小番頭に出世が約束されている。この五名もそろって秋田地方の出身であった。
松茸に似た毒茸もいろいろあるが、山キの二名の孫のイノチを奪ったものは、特に松茸にそッくりで、タテにさける。これは秋田の山間の限られた地域に見かけることができるもので、山キの主従はその毒茸の発生地域の出身であった。これはその土地の方言で、ヅラダンゴだの、ヘップリコなどゝよばれている猛毒のものだ。
本宅の者は材木の買いつけに生れ故郷との往復もヒンパンであるから、地方で育った小番頭や小僧は云うまでもなく、東京生れの喜兵衛も重二郎も生地名題の毒茸の知識はあった。台所の主権をあずかるオタネ婆さんも生国の毒茸を見あやまるようなことはない。
ところが運わるく向島の寮には、この毒茸を見破る能力ある者が一人もいなかった。