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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

16 その十五 赤罠

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页

青空文庫

新十郎はそう答えて笑った。

★

老師の話は淡々とあくまでも禅問答めいて呆気ないものだった。

「ああ。あの系図に過去帳のことか。故人がそのときここで書いたに相違ないが、ワシに花押をかけというから、ハンコで間に合わせてやったな。お経もあげてやらなかったな。浮世のことはハンコでタクサンのものだ。お経などはモッタイない」

「老師が故人の危険をさとって扉に向って走られたと承りましたが、コマ五郎があくまで止めだてしたことについては、どのようにお考えでしょうか」

「そんなことが分るかよ。あのズクニューめが。ワシを軽々と抱えて降りたバカ力はたいしたものだが、力持ちに利口がいたタメシはないものだ。アッハッハ」

何をきいても、この調子であった。

土佐八とその子波三郎を訪問したときはもッとひどい。

「コマ五郎親分が犯人だとは思われないが、どうして黙って手を後にまわしなすッたんでしょう」

と新十郎がきいても、

「知らないねえ」

まるでよその人の話をしているようだった。ただ反応があったのは、ダビ所の建築の仕掛をきいたときで、

「ダビ所の抜け道はどこに、どのように、仕掛けられていたのでしょうか」