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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

17 その十六 家族は六人・目一ツ半

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,745 字 · 44 页

青空文庫

すると、稲吉が頓狂な声をあげた。

「そう云えば、その人は、たしかに、来たぜ。なア。角平あにい。石田屋の者だが、メクラばかりで手が足りなけりゃア、手伝ってやるが、どうだ、と云って、表の戸をあけて声をかけた人があったよ。そのとき、下火になった、下火になった、てえ人々の叫び声がどッとあがったから、下火になったらしいじゃありませんか、と訊くと、しばらくカマチへ腰かけて話しこんで戻って行ったね」

弁「オレにはそんな話はしなかったが、それじゃア本当に寄ってくれたんだなア」

新「あの晩はメクラばかりで困ったろう」

稲「いえ、困ったのは婆アばかりで。あの婆アのドッタンバッタン慌てるッたら有りゃしねえな。たしかにタタミもあげていましたぜ。そのときウチに居たのは婆アのほかには、私と角平あにいだが、婆アの奴め、庭へ穴を掘れと云やアがる。表は一面に真ッ赤じゃないか。メクラにも火の色ぐらいは分らア。おまけに火の粉は降ってきやがる。穴なんぞ掘ってられやしない。とても庭に立ってられやしないよ。コチトラは焼けて困る物がないから、落ちついたものよ。イザといえば逃げられるように、出口に近いところで、外の様子をうかがっていたね」