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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

05 その四 ああ無情

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,336 字 · 47 页

青空文庫

「ヒサが死んだから、今度は夢之助にかかりきるというわけかね」

と、新十郎は珍しく苦々しげに皮肉を云った。

連行した容疑者一同は署に泊めおくことにして、新十郎がでかけたところは、根岸の夢之助の妾宅であった。召使いをよんで、

「十一月三十日に、夢之助と荒巻の両名が揃って戻ってきた筈だが、それは何時ごろだったね。楽の翌日の荷造りの日だよ」

「ハッキリとは覚えていませんが、夕方ちかいころでしたね。これで一段落、忙しい用がすんだ、と、すぐお酒盛でした。まだ日のあるうちに、疲れた、疲れた、とおやすみでしたよ」

「寝室は二階だね」

「旦那がお見えになると二階が寝室ですが、荒巻さんと御一緒の時は、そこの離れのような小部屋でございます。玄関からはどこよりも離れていますし、雨戸をあけると、誰にも見られず裏木戸へ抜けられます。荒巻さんは帽子も靴も荷物も一切合切この離れへ持ちこんで、イザと云えば逃げだす用意をととのえて、おやすみになるんですよ」

「二人はグッスリねていたかね」

「そんなことは知りやしません。ただ夜の十時ごろ水をと仰有ったので、お届けしましたが、荒巻さんの方は眠っていました」