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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
06 その五 万引家族
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,970 字 · 48 页
咲子は自分の人生が、暗い幕で行手を立ちふさがれたような絶望を思い知った。この運命からのがれる術はないであろうか。彼女はすでにニンシンしていたのである。まだ良人もそのニンシンには気がつかない。彼女がそのニンシンを独り気がついたとき、その喜びを死の宣告に代えるための悪魔からの伝言のように、一也が呪われた血の秘密を語りあかしたのであった。
彼女の胎内に宿った者の中には悪魔がすんでいるのだ。その胎児をおろし、呪われた浅虫家から逃げだすべきであろうか。彼女は良人を愛していた。しかし、それよりも、呪われた血が怖しかったのである。
自分を下賤の生れの者と見て、呪われた血の一員に平然ひきこんだ未亡人もキク子も憎らしい。又、良人すらも、その悪漢の一人ではないか。良家との縁組みは不都合でも、下賤の者ならよかろうというコンタンには変りがないではないか。
咲子はにわかに思いみだれて怒りに狂った。彼女は正司を詰問した。
「あなたが牛肉屋の娘を妻に選んだのは、こんな下賤な者なら癩病人の妻になっても苦情はでまいという肚ですね。私はもうこんな家には居りません」
正司は薄ノロではあるが、金持の子供らしく、チャッカリと、ずるいところ、抜け目のないところを失ってはいない。