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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

09 その八 時計館の秘密

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,134 字 · 43 页

青空文庫

生れつき大そう間のわるい人間というものがいるものだ。梶原正二郎という若い御家人がそれだった。そのとき彼は二十二だ。親父が死んで野辺の送りをすませたという晩に、

「今晩は。たのもう。どうれ」

両方分の挨拶にオマケをつけて大声で喚きながらドヤドヤと訪れた七八人。案内もまたず奥へあがりこんで、

「ホトケに線香あげにきたが、ホトケはどこだ、どこだ」

ホトケと隠れん坊しているよう。仏壇の前へドッカと坐りこんで、

「なるほど。この白木の位牌だな。ジジイにしてはミズミズしく化けたものだ。人間、なるべきものになって、まことに目出たいな。酒をだせ」

大変な奴ら。年のころは正二郎といくつも違わぬ若侍だが、いわゆる当時の愚連隊。その兄貴株に祭りあげられているのが望月彦太という乱暴者で、役向きでは組頭をしていた正二郎の父の配下になるのだが、組頭の威光などというものはこの男には三文の役にも立たないばかりか、うッかりするとインネンをつけられるモトになる。組頭であるために、正二郎の父はこの若者の顔を見るのが怖しくてたまらなかったというほどのシタタカ者。人の集りの多い通夜の席には現れずに、野辺の送りがすんでから乾分をつれてドヤドヤとやってきたのは、ホトケをカモに一夜ゆっくり飲もうというコンタン。