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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
09 その八 時計館の秘密
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,134 字 · 43 页
メカケを入れて本妻に出て行けという話はきいたことがないね。本妻が出て行かなきゃアならないものか、出るところへ出て、キマリをつけておくれ」
一力は物に臆さぬ剛気の丈夫であるが、男の顔が立つか立たないか、という不文律のサバキとちがって、法律のサバキは手に負えない。出るところへ出るサバキなんざア、ベラボーめ、男の知ったことか、と威張り返って済む話ではないから、こう言われると、さすがの親方も二の句がつづかぬのである。
たのむ一力もむなしく撃退される始末であるから、正二郎の落胆、悩みは測りがたいものがあった。
その時、正二郎をそッと訪ねて、耳もとでささやいたがはお龍婆さんであった。
「私しゃアね。旦那。差出がましいことですが、心配で仕様がないから、それとなく法律の先生にきいてきたのですよ。あのアバズレどもを追ンだす術がたッた一ツあるんですとさ。旦那はあのアバズレと結婚前に、お久美様という正式の奥方がおありではありませんか。歴とした旗本御夫婦。それが正式の御夫婦ですよ。それをタテにとれば、お米だのお源なんぞ追いだすのはワケはありゃアしませんとさ。その代り、旦那もお久美さんも二重結婚とやらの罪をきるそうですが、御一新のドサクサの際ですもの、夫婦は遠く離れてお互に生死も分らぬ非常の際、それはお上が察して下さるそうですよ。