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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

09 その八 時計館の秘密

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,134 字 · 43 页

青空文庫

こう苦労して人を殺すぐらいなら、いっそ自分が死にたいと、二人目ぐらいに気を失いかけてフラフラ逃げだすような人ですよ」

しかし新十郎はこの事件を忘れていたわけではなかったのである。

彼はある日、だしぬけに松島物産の事務所を訪れ、帳簿の提出をもとめて、数日がかりでシサイに調べた。

それから一ヶ月ほど経て、兵頭一力が上京したときに、彼は時計館の別館にただひとり一力を訪ねた。人払いをもとめて、静かに対坐し、

「私は警官ではないのです。別に犯人をあげたいとは思いませんが、私の性分として、犯人を知らなければならないのです」

彼はニコニコ一力に笑みかけながら、

「三名の者が失踪した二日目に、入荷した品物がありましたね。それを船で塩竈へ運ぶための」

一力はニコニコと、

「そう、そう、ランプ用の石油カン。それをおききになりたいのでしょうな」

「たしか二十本でしたな」

「その通りです」

新十郎はクスリと笑って、

「それが来たときは、二十本の石油カンですが、翌日は十七本の石油カンと、三本はほかの物がつまっていましたね」

「いえ。やっぱり石油です。だが、石油のほかの物も一しょにつまったというのが正しいのですよ」