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むかしのかじ
昔の火事
宮本 百合子
「改造」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,494 字 · 21 页
ここに、大昔、人間が棲んでいた竪穴があるんです。若い男は人のいい嬉しそうな笑顔で、実に珍しいんです、このように聚落をなしているのは。と云うのであった。ふーん。じゃ、あっちのもみんな、その穴ですね? そうですとも。功労者は、この小関君です。というのを見れば、それは中学の帽子をかぶった十六七の少年で、これも笑いひろげた口元が血色のいい頬っぺたを無邪気に盛り上げている。穴からは何か出ますかね。それは、発掘してみなければ分りませんが、土器は確に出るでしょう。淡白な答えで、猛之介に何となくその先の質問を出しかねさせた。猛之介のききたいところは、その土器というのは金目のものなのか、そうでないものか、という点なのである。
一団は、あちこちで掘りかえされている赭土の地肌から陽炎のたつ日向をゆっくり歩いて、改正通りの方へ出た。バスへのる迄注意していたが、洋服連の話は呑気で、大森の貝塚がどうのこうのというようなことばかりであった。
猛之介は、むずかしい顔つきで下唇をつき出しながら、独り又敷地の方へ戻った。モッコをかついだ人夫の往来を漫然と眺めながら、落付かない気がした。