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むかしのかじ

昔の火事

宮本 百合子

「改造」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,494 字 · 21 页

青空文庫

猛之介は気を引くように人夫頭の吉永に向って、ふん、物好きもあったもんだね、いくらかになるんかい、土器とかを掘り出して、と云ってみた。研究だろう、大学の方の連中だってえもの。これもあっさりした返事である。

じろりと吉永に一瞥を与えて、猛之介は敷地の外へ出た。どいつもこいつも、はぐらかしたような返事ばっかりする。吉永だってわかるもんか、初めっからあすこにいたからには、うまい話なら一丁のっていない筈はない。本当のことなんか云うものか。若し一文にもならないようなことなら、あんなに皆うれしそうな光った眼をする筈はありっこないのだ。これが猛之介の信念である。

整理組合のガラス戸越しにのぞくと、役員の中では一番年配の岩本が、ぽつねんと一人で外を見ているところであった。猛之介は、どうだね、いい話はないかね、と云いながら入って行った。岩本はすこし耳が遠いので、その挨拶には答えず、どうしたね、何か用かねと、新聞を片よせた。そこで猛之介は、昭和合金の敷地に竪穴が出たこと、そこから土器が出るらしいことを話した。へーえ、あすこからそんなものが出るのかね。じゃあ、よそにもあるかしんねえな。