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むかしのかじ

昔の火事

宮本 百合子

「改造」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,494 字 · 21 页

青空文庫

ふむ。土器なんてもな、どうなんだね、金になる代物かね。さあ。――とにかく博物館にゃ多分そんなようなもんも納めてあったな。

猛之介は、何んでもない世間話をして、そこを出た。博物館にも納っているとすれば、いずれ何か曰くはある物に相違ない。わるくひとにさわがれてしまうと工合がよくない。家へ戻るとセキが、声をひそめて、お父さん、何だったね、とよって来た。猛之介は例の見据えるような見かたで女房を顧みながら、何か研究で、穴を掘るんだとよ。樫の木の下の肥溜めに向って放尿しながら答えた。

敷地のぐるりがトタン塀で囲われた。職人の掛小屋が出来た。真先に門の横の番人小屋が出来はじまって、建築が着手される一方で竪穴の発掘も進行した。天気さえよければ朝早くから夕方まで、例のおとなしい顔の若い男がやって来て、人夫を指図し、自分でも泥んことなってかたい古い赭土の表面へ黒い布をはいだようなところを掘っている。中学生もよく来た。あらまし人夫に黒土を掬い出させたあとは、この連中が軍手をはめた手に園芸用のシャベルをもって、用心しいしい深さ一尺ぐらいで長方形をしたその穴を掘りおこして行くのである。