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ほしのこ

星の子

小川 未明

「婦人公論」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,212 字 · 11 页

青空文庫

あたりは、一面に煙るように青白い月の光にさらされています。この河のふちは、一帯に貧民窟が建て込んでいて、いろいろの工場がありました。どの工場の窓も赤くなって、その中からは機械の音が絶え間なく聞こえてきました。そして建物の頂にそびえたった煙突からは、夜の青い空に、毒々しい濁った煙を吐き出しているのでありました。

彼女は、ある工場の前では、多くの女工が働いているのだと思いました。また、鉄槌の響いてくる工場を見ては、多くの男の労働者が働いているのだと思いました。その人々は、みんな、このあたりのみすぼらしい家に住んでいるのだと思ったときに、彼女は、自分たちはどうしてここに生まれてこずに、金持ちの家へ生まれてきたか、しあわせといえば、そうであるが、そのことが不思議にも思われたのでありました。

ここを離れて、だんだん寂しい野原にさしかかると雪が深くなりました。手足は寒さに凍えて、ことに踏む足の指先は、切れて落ちそうに、痛みを感じたのであります。

どこを見ましても、あたりは、灰色の雪におおわれていました。そして、あの天国で聞こえるであろうような、よい音色も、また輝かしい明かりもさしていませんでした。