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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
ところが昨日本屋の奴が来やがって、いやに催促がましいことをいうもんだから、ひとまず君にはすまないが――そっちを綺麗にして鼻をあかしてやれという気になったのさ。で、これをまず君の方に納めて、あらためて五円にして貸してくれるわけにはいくまいかな」
「いいとも」
園はその長口上を少しまどろこしそうに聞いているらしかったが、人見の言葉が終るとすぐにこういって、机の方に向きなおった。園は例のとおり、ポッケットの中から、机の抽出しから、手帳の間から、札びらや銀貨を取りだした。あの几帳面に見える園には不思議な現象だと人見の思うのはこのことだけだった。あれで園はいつどこにいくら入れたということをちゃんと諳記しているのかもしれないとも思った。園は取りだした金を机の上で下手糞に勘定していたが、やがてちょうど五円だけにしてそれを人見の前においた。そして自分の方が金を借りでもしたかのように、男には珍らしい滑らかな頬の皮膚をやや紅くした。
「どうもすまないよ。どうもありがとう」
人見は思わずせきこんでこういったが、何か自分の言葉が下品に響いたようだった。
戸外では寒いからっ風が勢いこんで吹きすさんでいるらしく、建てつけの悪るい障子が磨りへらされた溝ときしり合って、けたたましい音を立てていた。