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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

「おやあなた僕の顔を見ていますね。ははは。僕の顔は出来損いですよ。それとも何かついていますか」

そういって彼は剽軽らしくわざと顔をつきだしてみせた。この場合あたりまえの娘ならば、真紅な顔になってはにかんでしまうか、おたけさん級の娘なら、低能じみた高笑いをして、男に隙を見せるか、悧巧を鼻にかけた娘なら、己惚れはよしてくださいといわんばかりにつんとするに極っているのだった。渡瀬はそのどれをも取りひしぐ自信を持っていた。ところがおぬいさんは顔をあからめもせず、すましもせず、高笑いもせずに、不断のとおりの心置きない表情に少しほほ笑みながら「いいえ」とだけいって、俯向き加減になった。

似而非物では断じてない。俺がいったんでは不似合だが、まず神々しい innocence だ。そういうことを許してもいい。十九……十九……まったくこれが十九という娘の仕業だろうか。渡瀬は少し憚りながらも、まじまじとおぬいさんを眺めなおさずにはいられなくなった。骨節の延び延びとした、やや痩せぎすのしなやかさは十六七の娘という方が適当かもしれないが、争われないのは胸のあたりの暖かい肉づき、小鼻と生えぎわの滑かな脂肪だった。