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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

そしてそこに体を倚せかけたまま、両袖を顔にあてて声をひそめながら泣きはじめた。

*    *    *

父が死んだという電報を受け取ったのは、園がおぬいさんの所に教えに行って、もう根雪になった雪道を、灯がともってから白官舎に帰ってきた時だった。

隣りの人見の部屋には柿江と森村とが集っているらしく、話声で賑わっていたが、園はそこを覗いてみる気持にもなれないで、そっと素通りして自分の部屋にはいった。

渡瀬がひどく酔払って白官舎に訪ねてきた翌日から、どうしてもおぬいさんを教えるのはいやだといいだしたので、そしてしきりに園に教えに行けといって聴かないので、彼は已むを得ず、一日おきにまたその家に通うようになったのだった。それがもう半カ月のあまりも続いていた。

幾度も玄関に出てその帰りを待っていたという婆やが、何か不吉の予感らしいものを顔に現わして園にその電報を手渡した時、園も一種の不安を覚えないではなかったが、まさかあの頑丈な父が死ぬものとは思っていなかった。文言を読んだ時でも父が死んだようには考えられなかった。ただ眼の前に自分の家の様子が普段のままな姿で明かに思いだされたばかりだった。