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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
「白く塗られたる墓」という言葉が聖書にある……あれだ。
深い綿雲に閉ざされた闇の中を、霰の群れが途切れては押し寄せ、途切れては押し寄せて、手稲山から白石の方へと秋さびた大原野を駈け通った。小躍りするような音を夜更けた札幌の板屋根は反響したが、その音のけたたましさにも似ず、寂寞は深まった。霰……北国に住み慣れた人は誰でも、この小賢かしい冬の先駆の蹄の音の淋しさを知っていよう。
白官舎の窓――西洋窓を格子のついた腰高窓に改造した――の多くは死人の眼のように暗かったが、東の端れの三つだけは光っていた。十二時少し前に、星野の部屋の戸がたてられて灯が消えた。間もなく西山と柿江とのいる部屋の破れ障子が開いて、西山がそこから頭を突きだして空を見上げながら、大きな声で柿江に何か物を言った。柿江が出てきて、西山と頭をならべた。二人は大きな声をたてて笑った。そして戸をたてた。灯が消えた。
二階の園の部屋は前から戸をたててあったが、その隙間から光が漏れていた。針のように縦に細長い光が。
霰はいつか降りやんでいた。地の底に滅入りこむような寒い寂寞がじっと立ちすくんでいた。