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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

農学校の大時計が一時をうち、二時をうち、三時をうった。遠い遠い所で遠吠えをする犬があった。そのころになって園の部屋の灯は消えた。

気づかれのした若い寡婦ははじめて深い眠りに落ちた。

*    *    *

「おたけさんのクレオパトラの眼がトロンコになったよ。もう帰りたまえ。星野のいない留守に伴れてきたりすると、帰ってから妬かれるから」

「柿江、貴様はローランの首をちょん切った死刑執行人が何んという名前の男だったか知っているか」

前のは人見が座を立ちそうにしながら、抱きよせたクレオパトラの小さな頭を撫でつつ、にやりと愛嬌笑いをしているおたけにいった言葉だが、それをおっ被せるように次の言葉は西山が放った。めちゃくちゃだった。けれども西山は愉快だった。隅の方で、西山が図書館から借りてきたカアライルの仏蘭西革命史をめくっていた園が、ふと顔を上げて、まじまじと西山の方を見続けていた。濛々と立ち罩めた煙草の烟と、食い荒した林檎と駄菓子。

柿江は腹をぺったんこに二つに折って、胡坐の膝で貧乏ゆすりをしながら、上眼使いに指の爪を噛んでいた。

ほど遠い所から聞こえてくる鈍い砲声、その間に時々竹を破るように響く小銃、早拍子な流行歌を唄いつれて、往来をあてもなく騒ぎ廻る女房連や町の子の群れ、志士やごろつきで賑いかえる珈琲