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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
怖いものを見窮めたいあの好奇心と同じような気持で、おぬいは今見た夢のそこここを忘却の中から拾いだそうとし始めた。
母があれはおぬいではありませんときっぱり人々にいっていた。おかしなことをいう娘だといいそうな快活な笑いを唇のあたりに浮べながら。まわりにいる人たちもおぬいに加勢して、あれはあなたのお嬢さんですよといい張ってくれているのに母は冗談にばかりしているらしかった。おぬいはもしやと思って自分を見ると、たしかにいつものとおりの着物を着て、それは情けなそうな顔つきはしていたけれど自分の顔に相違なかった。(おかしなことには他人の顔を見るように自分の顔をはっきりと見ることができた)……おぬいは家に留守をして私の帰るのを待っていますから、家にさえ帰れば会えるにきまっていますと母は平気であるけれども、それはとんでもない間違だということをおぬいは知り抜いていた。家に帰ってみてどれほど驚きもし悲みもするだろうと思うと、母が不憫でもあり残される自分がこの上もなくみじめだった。その不幸な気持には、おぬいが不断感じている実感が残りなく織りこまれていた。もし万一母を失うようなことがあったらどうしようと思うとおぬいはいつでも動悸がとまるほどに途方に暮れるのだが、そのみじめさが切りこむように夢の中で逼ってきた。