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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

それからその夢の続きはただ恐ろしいということのほかにははっきりと思いだされない。おぬいが母を見ている前で、おぬいでないものにだんだん変っていくので、我を忘れてあせったようでもある。母がどんどん行ってしまうのであとを追いかけようとするけれども、二人の間にはガラスのかけらがうざうざするほど積まれていて、脚を踏み入れると、それが磁石に吸いつく鉄屑のように蹠にささりこんだようでもある。

とにかくおぬいは死物狂いに苦しんだ。眼も見えないまでに心が乱れて、それと思わしい方に母恋しさの手を延ばしてすがり寄った。そして声を立ててひた泣きに泣いたのだった。

夢が覚めてよかったと安堵するその下からもっと恐ろしい本物の不吉が、これから襲ってくるのではないかとも危ぶまれた。緑色の絹笠のかかったラムプは、海の底のような憂鬱な光を部屋の隅々まで送って、どこともしれない深さに沈んでいくようなおぬいの心をいやが上にも脅かした。

おぬいは思わず肘を立てた。そしてそうすることが隠れている災難を眼の前に見せる結果になりはしないかと恐れ惑いながらも、小さな声で、

「お母さん」

と呼んでみないではいられなかった。