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えいがとらいのもんだい
映画と癩の問題
伊丹 万作
「映画評論」1941(昭和16)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,941 字 · 10 页
しかるに、映画的題材とは、映画の表現能力を、力いっぱい出しきれるような対象の謂でなければならぬ。
最初から映画的表現を封じられ、はらはらしながら、そこをよけて通らなければならないような題材をえらぶこと、いいかえれば映画作家として映画的表現に適しないものを取り上げることがなぜ良心的なのであろうか。そして、それがなぜ企画の勝利といわれるのであろうか。
映画「小島の春」が抒情的で美しいということはいったい何を意味するのだろう。叙情的で美しい絵を作ることが最初からの目的であるなら、何を苦しんで癩のような材料を選ばなければならないか。それはおよそ目的からは一番遠い材料ではないのだろうか。
映画「小島の春」を見て泣いたという人が多い。私自身も「小島の春」を見れば、あるいは泣くかも知れないと思う。しかし芸術の徒としての私は、芸術鑑賞および価値批判のらち内においては人間の涙というものをいっさい信用しない。
とはいえ映画で人を泣かせることには一応の困難が伴うことは事実である。普通の映画で客が泣くまでに我々が費している手続きと思考は大変なものである。
観客の理解と同情と感激とを要求するに足るだけの条件、すなわち悲劇の展開に必要なあらゆる境遇、あらゆる運命が手落ちなく描かれ、悲劇的なシチュエイションが十分に用意され、さてそのうえで