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えいがとらいのもんだい
映画と癩の問題
伊丹 万作
「映画評論」1941(昭和16)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,941 字 · 10 页
悲劇的な演技が始ってこそ初めて客の涙を要求することができるのであるが、この映画においてはそのようなめんどうな手数をしはらう必要はない。いきなり癩患者(むろん初期)が出てきて抒情的な風景の中で家族と別れる場面などをやってみせれば、それだけで我々は無条件に泣かされてしまう。
なぜならばこの場合においては、癩患者が癩患者であるということだけで泣くにはすでに十分なのであって、それは癩者個々の運命とは必ずしも関係を持たない。したがってかかる場合の観客の涙はその理由を作者側の努力に帰し難い部分が多い。
しかし、映画の癩者を見て泣いた人が現実の癩者を見て泣くかどうかは非常に疑問であり、芸術の世界と現実の世界とのこのような喰い違いは、一般にはほとんど問題にならないが、この種の作品においてはかなり重要な問題であると思う。
私がかつて漂泊の癩者を何人となく見てきた経験によると、現実の癩者を見て同情の涙をもよおすような余裕は、いっさいこれを持ち得ないのが凡人としてはむしろあたりまえだともいえる。こざかしい理智が何といおうと、私の感覚はあまりにも醜い彼らを嫌悪した。そうして伝染の危険を撒きちらしながら彼らが歩きまわっているという事実を恐怖し、憎悪した。