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えいがざっかん(に)

映画雑感(Ⅱ)

寺田 寅彦

「帝国大学新聞」1933(昭和8)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,516 字 · 11 页

青空文庫

胎児の蝋細工模型でも、手術中に脈搏が絶えたりするのでも、少なくも感じの上では「死の舞踊」と同じ感じのもののように思われる。終局の場面でも、人生の航路に波が高くて、舳部に砕ける潮の飛沫の中にすべての未来がフェードアウトする。伴奏音楽も唱歌も、どうも自分には朗らかには聞こえない。むしろ「前兆的」な無気味な感じがするようである。

海岸に戯れる裸体の男女と、いろいろな動物の一対との交錯的羅列的な編集があるが、すべてが概念的の羅列であって、感じの連続はかなりちぐはぐであり、従って、自分のいわゆる俳諧的編集の場合に起こるような愉快な感じは起こらない。人間も動物も同じものに見えてくることも自分にはあまり愉快でない。

動物のように戯れ、動物のように子供を生むだけの事ならば人生は謳歌すべきものとは自分には思われない。

作者はロシア人でも映画は純粋なドイツ映画である。ロシア映画にはもう少しのんびりした愉快な所もあるはずである。一応わかった事をどこまでも執拗にだめを押して行くのがドイツ魂であって、そのおかげで精密科学が発達するのであろう。

この種類の映画がこの方向に進歩したらおしまいにはドイツの古典音楽のようなものができるという可能性があるかもしれない。