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はるになるぜんや
春になる前夜
小川 未明
「東京日日新聞」1922(大正11)年1月7日~10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,856 字 · 8 页
すずめはしばらく、その後ろ姿を見送っていましたが、いつかその姿は、白いもやの中に消えて見えなくなりました。
すずめは、もうこれから、長い夜をなんの影も、また声も聞くことがないと思いました。どうか、今夜を無事に過ごしたいものだと思って、じっとして目を閉じて眠る用意をしたのです。しかし、寒くて、いつものように、どうしてもすぐには眠つくことができませんでした。
そのうち、急にあたりがざわざわとしてきました。驚いて目を開けて見まわしますと、いままで、さえていた月の面には、雲がかかって北西の方から、寒い風が吹いてくるのでした。すずめは、いよいよ天気が変わると思いました。
北国には、こうして、掌の裏を返さないうちに、天気の変わることがあります。
このとき、ここに哀れな旅楽師の群れがありました。それは年寄りの男と、若い二人の男と、一人の若い女らでありました。この人々は、旅から、旅へ渡って歩いているのです。そして、この荒野を越して山をあちらにまわれば、隣の国へ出る近道があったのです。もうこちらの国も思わしくないとみえて、その人たちは、隣の国へゆこうとしたのでしょう。