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はるになるぜんや
春になる前夜
小川 未明
「東京日日新聞」1922(大正11)年1月7日~10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,856 字 · 8 页
そして、道を迷って、こんな時分に、ようやくここを通るのでありました。
みんなは、うすい着物しかきていません。また、それほどいろいろのものを持っている道理とてありません。まったく、貧しい人たちでありました。
みんなはたがいに慰わり合いながら、月の光を頼りに歩いてきましたが、このとき、ちら、ちら、と雪が降ってくると、もはや、一歩も前へは進めなかったのです。
「ああ、とうとう雪になってしまった。」と、一人の男が、ため息をもらしていいました。
「私たちは、今夜は、野宿をしなければならないでしょうね。」と、若い女が、頼りなさそうにいいました。
「野宿をするにしても、この雪ではねるところもないだろう。」と、ほかの男がいいました。
四人のものは、転げるばかりに、疲れと、不安とで、もはや前へ踏み出す勇気もくじけていたのです。
雪は、ますます降ってきました。そして、たちまちのうちに、木を、丘を、林を、野原一面を、真っ白にしてしまいました。月の光は、おりおり雲間から顔を出して、下の世界を照らしましたけれど、その光を頼りに歩いてゆくには、あたりが真っ白で、方角すらわからなかったのであります。