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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
久保田万太郎『春泥・三の酉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春泥、三の酉。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 页
――こんなことなら北海道で御難をくってたほうがよっぽどましだった。――俺ァそのときしみ/″\そう思った。」
「戯談……」
田代のそう笑いかけるのを、
「じゃァねえ、ほんとうだ。――ほんとうのこった。」三浦はすぐに押えて「そのときッきりだ。――そのとき来た以来だ。」
草に、木に、水に、夢のようにすぎた二十年の月日の、どんなその破片でもいゝみつけたい、さすがに三浦もそうした寂しいとりなしをみせた。――夏なら木下闇の、枯れ枝ながら鬱陶しくさし交した下は、溜った落葉の、土の匂も湿けて暗かった……
「君は来るのかい、始終?」
小倉のほうを向いて田代はいった。
「始終も来ねえが三月に一度位ずつは来る。」
「何しに来るんだ? ――矢っ張発句のほうの……?」
「そうじゃァねえ、ぶらッとたゞ来るんだ。――芝居のたまの休みにこゝへ来てぶら/\するほどいゝ心もちのものはねえ。」
「三浦の釣堀と一対だ。」自分だけ田代はうなずいて「どうだ、そっちは? ――行ったかい、もう?」
「行かなくってよ。――二三日つゞけて行ったが面白くねえから止した。」
「どうして?」
「いま小倉のいった通り、俺の釣堀だって芝居のたまの休みに、それこそ一日か二日の忙しい中を無理をして行くからこそたのしみにもなるんだ。