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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
「三田文学 第四七三巻第一号」三田文学会、1953(昭和28)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,030 字 · 15 页
花車が、次つぎと競いあうように夜の深みへと馳せ上って、人びとの歓声がひときわ高くなった。
ふと彼が、聞きなれぬ発音の歓声に振り返ると、ビルの屋上の出入口の近くで、大柄な外国婦人に手を引かれた金髪のまだ幼い少女が、絶え間なく夜空に咲くさまざまな色の花車に、手を振って、なにか大声に叫んでいた。幼ない真白い腕と脚が、ひどく長い。白い服の、眼の碧い、まるでお人形のような少女だった。
銀髪に紅い頬の、年老いた伴れの婦人が、気難かしげにそれを押し止めている。だが、桃いろのリボンを結んだその少女は、花火の打ち揚げられるごとに、頬を輝かせ、繋がれた仔犬のように跳ねまわって、手を振り、狂人のようにたかく歓呼するのだ。
彼は、そのとき、こんなことを想った。
幾年か後、アメリカかどこか、異国の都市に住まいながら、成人したこの少女は、問われるままに、きっとこう答えるだろう。――え? ハナビ? 日本のハナビなら、私、六つのときトウキョウで見ましたわ。ええ、よく憶えています。それは、とても素晴らしかったわ。……
突然、拍手が湧き起って、群衆の歓声が、巨大な濤の音のように耳に鳴った。