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じだいとひとびと
時代と人々
宮本 百合子
「婦人公論」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,256 字 · 17 页
そして、思えば、先生がいつとはなしに私に及ぼしたああいう深い人間的な感銘と、よりよい人生への願いはとりも直さず、若かった先生が御自身の女性としての生涯にも衷心から求めていられたものではなかっただろうか。
人及び女性としてのその真摯な希望は、強烈な何ものかを内部に蔵していたこの一人の私たちの尊敬すべき先輩の今日の上に、どんな花をさかせているのだろうか。
大正の中頃からのちの激しい時代のうつりかわりと、その間に転変した女性一般の生活の大きな変化は、千葉先生と私との間をもいつとはなし吹きわけることとなった。どちらもそれぞれに結婚もした。先生はそれより前にどういう事情でか学校をやめられた。極めて自分だけのこととして結婚もされ、現在は、私のところまで御消息はつたわって来にくくなっている。そこに、何か私たち女の生活の推移を暗示する、無限の余韻を感じずにはいられない気がする。先生よ、幸にお健やかでしょうか。
師といえば、私の作品を初めて紹介して下さった坪内逍遙先生のこともふれなければならないわけである。
坪内先生とは余り年代がちがいすぎていた。それに私としての結ばれかたが他動的であったことなどから、外面には大きくかかわりながら、語るとなると消極なあらわれかたになる。