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とけいやしきのひみつ

時計屋敷の秘密

海野 十三

「東北小国民」1948(昭和23)年5月~10月、「AOBA」(「東北小国民」改題)1948(昭和23)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,481 字 · 74 页

青空文庫

金額はいろいろとうわさされたが、とにかくヤリウスの家扶の門田虎三郎は、左平から金を受取ると、屋敷を明けわたして出ていった。

大よろこびの左平だった。

さっそく家族をつれて、この屋敷へひっこした。妻君のお峰と一人娘の千草と、あとは雇人が十人近くいた。

左平のとくい顔が見られたのは、それから半年あまりの間だった。そのあとは、左平の顔には何だかやつれの色が見え、そして何事かについてあせっているようだ。

それを村人がしんぱいして、それとなくわけをたずねたが、左平はいつもかぶりをふって、

「何も、しんぱいなぞしていない、そんな話はもうごめんだ」

と、耳を貸すのもきらった。

その左平は、ちょうど一年ほどたって、時計台の天井にひもを下げ、自分の首をくくって死んだ。遺書があった。

「いのちがおしいものは、この屋敷に近よるな。左平」

と、かんたんな文句がしたためられてあった。

左平の自殺を見つけたのは、雇人の喜三という老人だったが、そのしらせに村人がこの屋敷へかけあつまったとき、さらにへんな話を聞いた。

それはこの一ヶ月ばかり、奥様も千草も共に雇人たちに顔を見せず、そのことを旦那さまの左平にいうと、左平のきげんがたいへんわるかったとのことだった。