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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
「むむむむ……うう……」
と呻吟しつつ屍体が強直したと思うと、起き上るかのようにうつ伏せに寝返ったが、そのまま又べったりと長くなってしまった。ごろごろと咽喉を鳴らして赤黒い液体を吐き出しながら……。
皆立ったまま顔を見合わせた。一人残らず色を失っていた。
思わず立ち上って屍体をじっと凝視したまま、唇を噛んでいた少年も、全く血の気をなくしていた。そうしてぶるぶると震え出しながら、力なくブローニングを取り落すと、がっくりとうなだれたまま志免警視の方に両手をさし出した。涙がはらはらと床の上に滴り落ちた。
「……縛って……下さい。僕は……人を殺しました」
「あはははははは」
と志免警視は又も制服を反りかえらして笑い出した。剣の柄をがちゃがちゃと乗馬ズボンの背後に廻しながら、帽子をぐいと阿弥陀にした。
「……ゴンクールの奴、途中で気が付いて取り換えやがったんだ。……あはははははは……自業自得だ……」
皆呆れて志免警視の顔を見た。
「いや……心配しなくてよろしい……君は無罪だ」
「えっ……」
と少年は初めて顔を上げた。意外の言葉に眼を輝かしながら……。
志免警視は一歩進み出て少年の肩に手を置いた。