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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

光代は向き直りて、父様はなぜそう奥村さんを御贔負になさるの。と不平らしく顔を見る。なぜとはどういう心だ。誉めていいから誉めるのではないか。と父親は煙草を払く。それだっても、他人ではありませぬか。と思いありげなる娘の顔。うむ、分った。綱雄を贔負せぬのが気に入らぬというのか。なるほどそれは御もっともの次第だ。いやもう綱雄は見上げた男さ。お前のいう通り若くて上品で、それから何だッけな、うむその沈着いていて気性が高くて、まだ入用ならば学問が深くて腕が確かで男前がよくて品行が正しくて、ああ疲労れた、どこに一箇所落ちというものがない若者だ。

たんとそんなことをおっしゃいまし。綱雄さんが来たらば言っつけて上げるからいい。ほんとに憎らしい父様だよ。と光代はいよいよむつかる。いやはや御機嫌を損ねてしもうた。と傍の空気枕を引き寄せて、善平は身を横にしながら、そうしたところを綱雄に見せてやりたいものだ。となおも冷かし顔。

ようございます。いつまでもお弄りなさいまし。父様はね、そんな風でね、私なんぞのこともね、蔭ではどんなに悪く言っていらっしゃるか知れはしないわ。これからは私アもう、父様のおっしゃったことを真実にしないからようござんす。