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そがのあばれんぼう

曽我の暴れん坊

坂口 安吾

「キング 第三〇巻第六号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 19 页

青空文庫

「オーイ。コラ、コラ。蛸の足」

「なんだと」

一同ふりむいてみると、雲つくような大男がニコニコ笑って立ってるから、

「蛸の足とは、なんだ」

「八人だから、蛸の足だ」

「なるほど」

「オレは当家の居候だ。オレに断りなく上ってはこまるな」

「断って上るが、よいか」

「オレはよいが、オレの手に持つものに、きいてみろ」

「手に何も持たんじゃないか」

「いま、もつぞオ」

肩の弓矢を外して地においた五郎、玄関脇の松の木にムンズと組みついた。

「オ。松の木に相談するのか。面白いな」

「いまにもっと面白くなるから待ってろ。アリャ、リャ、リャ、リャ……」

ゆさぶるうちに大地がメリメリとさけてきた。

「エイッ。ヤッ」

と五郎が満身の力をふりしぼって押しつけると、悪侍の頭上へ松の木が倒れてきたから、おどろいた。

松の葉にさされながら逃げのびて、茫然と仲間の顔を見合っている。

「さ、松の木にきいてみろ。たって上るか、どうだな」

さすがに親分の権太、何食わぬ顔、五郎に近よりざまに太刀をぬいて斬ってかかる。五郎、体をひらいて、トントンと前へ泳いでくる権太の利き腕をたたく。力を入れて打ったようでもないが、腕が折れてなくなったよう。