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そがのあばれんぼう

曽我の暴れん坊

坂口 安吾

「キング 第三〇巻第六号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 19 页

青空文庫

「さっそく駈落ちしやがったぜ。追跡だ」

「それ」

二十人もの郎党が追跡して二人をとりかこんだ。

「主人の寵愛の女と駈落ちとは怪しからん」

「駈落ちは致さん。ごらんの通り兄弟二人だけだ」

「どこかに隠しているのだろう。女を奪われては家来の面目がたたないから、尋常に勝負しよう」

「拙者はある事情があって命を大事にしなければならないから、平に御容赦ありたい」

十郎は一所懸命ペコペコあやまってる。五郎はムズムズして、

「エヘン。エヘン」

道ばたの百貫ほどもある大石の前へ歩みより、ユラリユラリとこじ起し、肩をさし入れて、エイ、ヤア、ヤア、と目よりも高く差し上げ、ドスンと下へ投げ落した。これを見て驚いたのは義澄の家来の者。

「片貝の姿が見えないからたぶん駈落ちではなかろう。どうも、失礼いたした」

と、こそこそ退散してしまった。十郎は気色を変えて五郎を叱りつけ、

「仇討までは大事な命、つまらぬことで事を起すのは慎むように心がけるがよい」

五郎のおかげで事が起らなかったのに、アベコベに五郎が怒られて仕方なしに頭をかいている。

ところが間の悪い時には仕方がないもので、夜が明けはなれ二人が葉山のあたりまでくると、鎌倉から戻ってくる平六に会った。