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あさのはなし
朝の話
宮本 百合子
NHKラジオの原稿、1946(昭和21)年9月13日放送
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,438 字 · 5 页
東京の町なかでこの間のうちあちらこちら盆踊の太鼓が鳴りました。ハア、おどりおどるなら、という唄が流れ、夜更けまで若い人々は踊りました。ことしは豊年というので、ああ踊が立ったのでしょうか。
あの太鼓をきいて思い出した方が多いでしょう。戦争がうんとひどくなるすこし前に政府は日本じゅうに踊をはやらせて、ものを真面目に研究したり考えたりする年頃の若い人を、さんざ踊らせました。
踊りふけっているとき、頭の中に何があるでしょう。今日、豊年という日本の秋には、深刻な失業の問題が私たちをおびやかしていてその対象は先ず婦人青年です。国鉄を見てもそれはすぐわかります。この間の踊を熱中したのはどんな人々でしたろう。若い婦人若い男の人たちでした。太鼓は鳴ります。うたがきこえます。そして私たちは、何年か前に、これらの若い人々の運命がきびしくなろうとするとき却って若い人々をおどらす太鼓が鳴ったのを思いおこしました。
どっさりの方がそうでしたろうと思います。
ここにわたしたちの生活に即した考えのいとぐちがあり政府が奨励する町の踊りについての民衆の声があったわけです。みんなが考えたことをみんなが表現する自信さえもったら、社会の進歩のための輿論は活発になります。