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あさやけ

朝やけ

豊島 与志雄

「光」1947(昭和22)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,795 字 · 24 页

青空文庫

雇いの小女はもう先刻帰っていってる。

中野は煙草に火をつけて、それから言った。

「トランプを貸してよ。」

「どうするの。」と喜久子は尋ねた。

「あれをしてみるのよ。」

「じゃあ、やってごらんなさい。」

なにか二人だけの約束事らしい。

中野はトランプを並べた。円形に時計の文字盤通りに、四枚ずつ十二ヶ所、そして中央に一ヶ所、その中央からめくり初めて、出た数字のところへ移ってゆく。時計占いだ。彼は器用な指先で札をめくってゆく。中央のキングが四枚揃って開いたところで、調べてみると、七時のところに一枚だけふさったのが残っていた。

「それごらんなさい。」と喜久子は言った。「一杯だけよ。どっちにするの。」

「いいえ、お酒はもうたくさん。……それよりか、まったくふしぎよ。」

ふしぎというのは、七時のところにだけ一枚残ったことだった。彼が言うには、この頃、毎日続けて朝の七時に夢をみる。へんな夢をみる。それが気になっていたところへ、トランプがまたそれを示した。

「マダムも、七時に夢をみるでしょう。」

「七時頃、夢なんかみないわよ。」

「でも、今にきっとみるようになってよ。」

「どうして。