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あさやけ
朝やけ
豊島 与志雄
「光」1947(昭和22)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,795 字 · 24 页
その私が、ほかに恋人を持ってるなどと誤解されるのは、つらいことです。マダムは誤解してるんです。私からあまり弁解するのもへんですから、あなたからも、口添えして下さいませんか。」
「つまり、その音楽家が君の恋人でないということになれば、それでいいのかい。」
「そうなんです。」
「そして、それが本当なのかい。」
「本当です。」
「そんなら、もうそれで構わないじゃないか。」
「ただ、マダムから誤解されて、怒られてると、私はいやなんです。」
「そんなこと、わけはない。僕からもよく言ってやろう。」
「お願いします。」
話はそれで終った。ところが、やがて酒場にはいって、喜久子の顔を見ると、突然、おれは自分の立場の滑稽なのを感じた。――彼はおれと喜久子との仲をよく知ってると言った。それは本当だろう。而もそのおれの前で、それは別問題として、彼と彼女とはお互に好きだと公言した。全然おれを無視しているのだ。そして女流音楽家のことなど持ち出した。その図々しさには、何か他に秘密があったのだろうか。
おれは中野の話を喜久子に伝えた。
彼女は笑った。
「あのひと、可愛いいところがあるわね。あたしがちょっと拗ねた風を見せると、すぐ本気にするんですもの。