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あさやけ

朝やけ

豊島 与志雄

「光」1947(昭和22)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,795 字 · 24 页

青空文庫

」

「中野は君を好きだと言った。君も、中野を好きだと言うんだね。」

「まあ……そうね。」

「それを、僕の前で言うのかい。」

「言ったっていいじゃないの。遊びですもの。」

彼女はきらきら光るような瞳を、じっとおれの眼に据えた。

「あんたの方は、遊びじゃない、真剣なのよ。」

そして彼女はおれの首を抱いたが、おれは唇をそむけた。

彼女はおれの方を真剣だと言う。だが、それは肉体だけの真剣さだ。この真剣さは、いつ他へ移動して、おれのところには遊びしか残らなくなるかも知れない。中野はそれを見抜いているのかも知れない。或は本能的に察してるのかも知れない。実際のところ、おれの方だって、喜久子を愛してるとは言えない。ただ肉体だけの享楽だけじゃないか。然し、それならば、いったい愛とは何だ。彼女の体温に溺れこみたいこの誘惑や衝動は何だ。

おれは決意した。もっとも、今考えると、それは酔漢の決意だ。

おれは可なりの金額を調達した。喜久子のところへ借りの全部を払い、更に余分に彼女に預けた。そして飲めるだけ飲んだ。彼女を通じての伝言で、中野も来た。

「めでたい用件だが、それは最後にしよう。