轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あさめし

朝飯

島崎 藤村

「芸苑」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,926 字 · 6 页

青空文庫

五月が来た。測候所の技手なぞをして居るものは誰しも同じ思であろうが、殊に自分はこの五月を堪えがたく思う。其日々々の勤務――気圧を調べるとか、風力を計るとか、雲形を観察するとか、または東京の気象台へ宛てて報告を作るとか、そんな仕事に追われて、月日を送るという境涯でも、あの蛙が旅情をそそるように鳴出す頃になると、妙に寂しい思想を起す。旅だ――五月が自分に教えるのである。

いろいろなことを憶出すのもこの月だ。

ある日のことであった。丁度自分の休暇に当ったので、事務の引続を当番の同僚に頼むつもりで書いて置いた気圧の表を念の為に読んで見た。天気、晴。気温、上昇。雲形、層、層積、巻層、巻積。よし。それで自分は小高い山の上にある長野の測候所を出た。善光寺から七八町向うの質屋の壁は白く日をうけた。庭の内も今は草木の盛な時で、柱に倚凭って眺めると、新緑の香に圧されるような心地がする。熱い空気に蒸される林檎の可憐らしい花、その周囲を飛ぶ蜜蜂の楽しい羽音、すべて、見るもの聞くものは回想のなかだちであったのである。其時自分は目を細くして幾度となく若葉の臭を嗅いで、寂しいとも心細いとも名のつけようのない――まあ病人のように弱い気分になった。