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あさかのみやでんかにじしてみなみアルプスのたび

朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅

木暮 理太郎

「中学生」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,765 字 · 26 页

青空文庫

台ヶ原へ下る

瀑の水は小屋の飲料水で、清冽無比、一分間と手を漬けていられない。小屋にお着きになったのは午後三時であった。

台ヶ原へ下る

二十六日。今日は昨日に引換えて朝から霧が深い。御出発は午前七時であった。始めは木の間を罩めた霧の間から、時折八ヶ岳の頂上が望まれたが、下るに従って霧は大粒となり、梢から露が雨のように零ちて来る。然しもう眺望には思い残すこともないので、「これは涼しくてよい」と仰しゃる殿下のお言葉通りに路は捗って、屏風岩の小屋へは八時少し過ぎに着いて了った。県では尾白渓谷の御探勝を頻りに希望して、そこへ御歩を枉げさせ給うよう再三の願であったが、正午迄には台ヶ原の御休息所へ御到着の思召に加えて、手入したとはいえ新開にも等しい路では思の外に時間を要する御懸念もあらせられたので、県の人には気の毒であったが、普通の登路を竹宇へお下りになった。屏風岩、剣の刃渡り、栂や五葉松の老幹、岩のたたずまい、皆殿下の御感興をお惹き申したように拝察した。

駒ヶ岳神社の社務所へお着きになったのは十一時であった。神社に御参拝の後、記念の松を御手植になって、お休みの御暇もなく直に御出発になった。