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こがらしのさかぐらから

木枯の酒倉から

坂口 安吾

聖なる酔っ払いは神々の魔手に誘惑された話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,163 字 · 22 页

青空文庫

――二十石の酒樽を抱きかかえるようにしてグイグイ、ぐいぐいと酒の灰色を一息に(茨じゃよ)あおるのだ。木枯がペンペン草を吹き倒すとき、俺は毎年もとの酔っ払いに還元してしまうのだった。

こうして俺、聖なる呑んだくれは、武蔵野の木枯が真紅に焼ける夕まぐれ足を速めて酒倉へ急ぐのだが――すると酒倉の横っちょには素っ裸の柿の木が一本だけ立っているのだ(君は勿論知るまいが――)。この柿は葉が落ちても柿の実の三つ四つをブラ下げて、泌むような影を酒倉の白壁へ落しているのだが――俺は毎日このまっかな柿の実へ俺の魂を忘れて、ふいと酒倉へもぐるのだ――と、こう思うのがせめても俺の口実なんだ。だから俺は安心して、あれとこれとは別物だけれど、まるで魂を注ぐように、酒樽にとびかかると、ぐいぐいぐいぐいと酒を魂を呑んじまうんだあ! 概して俺はこの酒倉で最もへべれけに酔っ払う男の唯一人で、酒倉の階段を踏みはずすと窖へ宙づるしにブラ下ったまま寝ちまうこともままあるのだ。そんな朝、目が覚めると、頭の下から足の方へ登ってゆく太陽を天麩羅だろうかと眺めるんだが……

酒は憎むべき茨じゃよ、全く俺は毎夜ダブダブ酔っ払って呪いをあげるのだけど――冒頭にお話しした聖なる禁酒の物語はペンペン草の夏ではない、頑として木枯の真っただ中に(うう、ぶるぶる)行わ