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こがらしのさかぐらから
木枯の酒倉から
聖なる酔っ払いは神々の魔手に誘惑された話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,163 字 · 22 页
れたのじゃよ。それはそれは悲痛なものであったのだが、まあきき給え。
――愛する行者よ。と、俺は一夜鬱積した酒の呪にたまりかねて、幾杯目かの觴を呑みほしたとたんに、憎むべき行者の楽天主義を打破しようと論戦の火蓋を切ったのだ。
――愛する行者よ、鉢顛闍梨の学説は不幸にしてイマヌエル・カント氏に先立って生れたるが故にここにたまたま不運なる誤謬を犯すに至ったものであることを、余は尊公のために歎くものじゃよ。思うに尊公等岩窟断食の徒は人間能力の限界について厳正なる批判を下すべきことを忘却したがために、浅慮にも人間はつまり人間であることを忘れ恰も人間は何でもない如くに考え或は亦人間は何でもある如くに考えるのじゃよ。さればこそ尊公は酒と人間との区別を失い、酒は尊公の肋骨であり尊公は酒の肋骨……うむうむ、であるなぞと考えるのじゃ。げに恐るべき誤謬じゃよ。かるが故に――(と二十石の酒樽より酒をなみなみと受けて呑みほし)
――かるが故に尊公は又人間能力の驚嘆すべき実際を悟らずして徒に幻術をもてあそび、実は人間能力の限界内に於て極めて易々と実現しうべき事柄を恰も神通力によってのみ可能であるなぞと、笑うべき苦行をするのじゃ。